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手首:永井豪自身による作品群

他ならぬ作者本人である永井豪も原作漫画版『デビルマン』(1972〜)以降、このモチーフを展開し続けた。『デビルマン』終了後に連載を開始した『バイオレンスジャック』(1973〜)では物語の最後に『デビルマン』の続編であったことが明かされ、永井豪作品全体を有機的に結びつける試みが加速。さらに1997年より漫画雑誌『モーニング』に掲載された『デビルマンレディー』では主人公を女性とし、女性キャラクターによるフィジカルで直接的な暴力表現という潮流を作り出した。永井豪本人も、『デビルマン』というモチーフに取り憑かれた者の一人なのである。

親指腹:他作家によるデビルマン

『デビルマン』という作品世界の行間に、他の作家の想像力を滑り込ませる。そのような試みは何度か行われてきた。代表的なものが1999年から2000年にかけて刊行された『ネオデビルマン』である。ここでは永井豪本人の他、石川賢、岩明均、永野のりこ、安彦良和、寺田克也といった錚々たる面々による『デビルマン』のサイドストーリーが語られている。また、不動明と合体することでデビルマンとなったアモンを中心に、起こり得たかもしれない『デビルマン』の世界を語る『AMON デビルマン黙示録』(2000)など、他作家による『デビルマン』のリミックスは度々行われている。

人差し指:ファンタジー的な世界観

"異形の生物たちが殺し合い、その戦いの中で進化を続ける"という、デーモンたちの世界。人類登場以前のこの世界観を考証的に描いたという点も『デビルマン』の革新的な点だった。この設定や考証面の意識の高さから、『デビルマン』は国産ダークファンタジーの始祖と捉えることもできるだろう。この系統の直系としては、残虐な暴力性と異形へのこだわりに彩られた『ベルセルク』(1989〜)や『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』(1988〜)がある。その影響は、近年でも『テラフォーマーズ』(2011〜)や『進撃の巨人』(2009〜)などの作品に見ることができる。

中指:現実の延長的にある異能

平凡な生活を送っていた主人公がなし崩し的に異形の者たちとの暴力的な戦いに巻き込まれ、いつしか現実世界自体が不可逆的な変化を遂げていく。今では定番のプロットとなったこの展開も、『デビルマン』によって一般的になったとも言える。代表的な作品では『バオー来訪者』(1984〜)や『寄生獣』(1988〜)などが、この要素を大きく発展させた作品である。また、近年では『亜人』(2012〜)や『東京喰種 トーキョーグール』(2011〜)などの作品にも、『デビルマン』から受け継がれた要素が見え隠れしている。学校など見慣れた風景を登場させ、読者も受け入れやすいこれらの作品群は、最も進化が目覚ましいジャンルだ。

薬指:聖書や神話、黙示録的なモチーフ

「悪魔と神」という極めて宗教的なモチーフに生物的かつSF的な設定を加えることで、価値観を逆転させた『デビルマン』。永井豪にとって重要な短編である『鬼-2889年の反乱-』(1970)、そして『魔王ダンテ』(1971〜)から見られたこの試みは、『デビルマン』に至ってついに完成した。宗教的モチーフを作品内に落とし込み、世界の終わりまでたどり着いたという点では、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995〜)にも共通点が見られる。また「悪魔」という存在をダークヒーローとして捉え直し、主人公側に据えた作品としては『アクマイザー3』(1975〜)や、アメリカンコミックスの『スポーン』(1992〜)などがある。

小指:盟友・石川賢による作品群

永井豪のアシスタント出身で、かつ永井をして盟友と言わしめた漫画家・石川賢。『ゲッターロボ』シリーズ(1974〜)や『魔獣戦線』(1975〜)、『虚無戦記』(1999〜)などで知られ、激しいバイオレンス描写と末広がりなストーリー展開が持ち味である。石川は1968年に永井が設立したダイナミック・プロダクションに所属し、永井作品の共同原作などの形でも活躍。単なる師弟関係を超えて相互に影響を与え合った。それゆえに石川作品にも『デビルマン』の影響は見られる。肉体改造や融合というテーマを扱った『魔獣戦線』や、多数の自作を相互に結びつけて語り直す手法をとった『虚無戦記』には、特にその影響が色濃い。